PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。
わからない人にはわからないかも…。
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ふとした時、彼女は何をしているだろうかと、考える。
口づけをかわし、永遠を約束した。
最初で、最後の相手。
ある日の、自室。
本をめくる手もそこそこに、紅茶を一口すする。
以前、綾乃に貰った、アッサム。この頃の、僕のお気に入り。
手のひらの上の書物では、平安の時代を生きた男女が、身分ゆえの結ばれない愛を嘆いていた。
時代を考えれば、割とありふれた話。
この時代でも、無いことはないが……まあ、それはいい。
もし、僕らがこの本の中の男女だったら。
そんな考えが、なんとなく浮かんだ。
たらればは、あまり好きじゃないけれど。
僕はただの身分の低い役人で、彼女は高貴な出の姫で。想いだけが募る日々。
常世において結ばれることはなく、残る術は全てを捨てるか、あの世で共になるか。
もし、彼女が望むというのなら、僕は迷いなく連れ出そう。
守るものがはっきりしている僕を、遮ることなどさせはしない。
雲のない月の夜に、きっと連れ去ってみせるだろう。
そんな想像から思考が現実に戻った時、ふと外を見れば、満月が輝いていた。
彼女を、月よりも綺麗だといった日を思い出して、我ながら恥ずかしいことを言った、と、一人赤面する。
そういえば。ふと火照った顔に風を送りながら、以前綾乃が話していたことを思い出した。
「恭ちゃんも、好きな人ができた時のために、勉強しておくといいと思うよ」
言いながら、差し出されたのは、一冊の本。花言葉について書かれたものだった。
少し億劫に感じながらも、本棚を探り、取り出す。秋の花のカテゴリのページを、なんとなく読んでみる。
その中に、ふと目をとめた花があった。
「……ふむ」
少し赤が混じったその花に、僕は彼女のある表情を重ねた。
そうして、想いは口より紡がれる。
「あき来ぬらむ とはにかほりし 酔芙蓉……」
月にむかって投げかけるように、思いついた俳句を唱える。
言葉は霧散し、欠片も残ることはなく。
風だけが静かに、僕の顔を掠めていく―――。
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