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PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。 わからない人にはわからないかも…。
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サルベージした偽シナのリプレイです。





●招かれた挑戦者
 綾乃が神社の面々へ呼びかけをしてから数日後。それに応じた五人は、銀誓館学園の裏手、広大な森の中心に在る、渡会家の屋敷に招かれていた。
「綾乃のご学友の皆様、ようこそいらっしゃいました。綾乃が母、渡会・緑と申します、以後お見知りおきを」
 広い客間、綾乃を先頭とした面々に向かって礼儀正しくお辞儀する女性は、綾乃が決闘を仕掛けた者の一人、緑。優雅に緑色の着物を棚引かせ、頭を下げる姿は雅という言葉が似合う。そしてその向こう。独特の雰囲気を纏い、色の完全に抜け切った白髪が特徴的な、現渡会家当主、渡会・志乃はそこに在った。その鋭い眼光は、まるで挑戦者たちを品定めしているかのようでもある。
 その言葉に、一歩前へ進み出て挨拶をするのは、今回最年長者の小野・早深(魂呼の速来津姫・b03735)。身嗜みはきっちりと整え、微笑とともに深々とお辞儀。
「渡会さんのお祖母さん、お母さん初めまして、私は小野・早深といいます。綾乃さんとは、仲良くさせて頂いています」
そして、他の面々もそれにならって挨拶。そんな中、頭を一人下げない綾乃と志乃は互いに向かい合ったまま動かない。先に口を開いたのは志乃。
「……綾乃や、絆などというなれ合いの末に得た物がどれほどのもんか、見せてもらおうかいね」
「……っ! また、なれ合いなどと!」
 その言葉に、綾乃の眉が激しく跳ね上がる。普段見せない感情的な一面。今にも斬りかからんとばかりの殺気を吐き出す。が、それを察知した鬼頭・鋼誠(鬼鋼蜘蛛の吼切・b70561)が面を上げ、すかさず割って入る。
「落ちつけ渡会。今のお前は、昔のお前じゃない。俺たちがいるからな。……忘れるなよ」
 納得いかない、という顔だが、しぶしぶ鋼誠の言葉に従う。言葉少なの前哨戦、そこに緑が水を入れた。
「それでは皆さん、我らが当主もお待ちかねのご様子ですので、移動いたしましょうか」
 志乃とともにゆっくりと和室を出る緑。その口元がわずか微笑っているように見えたのを、暮井・牧人(日暮色二番星・b71102)は見逃さなかった。


●開戦
 一行が移動したのは、渡会の人間がその技を磨くべく利用する修練場。一面が緑に埋め尽くされた森の中、円形上のこの空間だけは土の色をしている。先導していた志乃が振り返り、指を一つ鳴らすと、緑のローブを纏った者が四人、何処からともなく現れた。
「私の指揮する特殊部隊『鴉』の者で皆、渡会一族の者です。平たく言えば、対外敵用部隊といったところでしょうか。今回は、志乃様を含めた我ら六人がお相手させていただきます」
着物を大きく翻させたと思いきや、いつの間にやら忍者装束を身にまとった緑がそこにいた。
「ごたくは要りません。……始めましょう、お母様」
まるで興味なし、といった顔の綾乃。やれやれ、とかぶりを振って緑は至って平然と言う。
「舐められたものですね、綾乃。所詮幻想は幻想、灰は灰に。貴女も在るべきところへつれ戻してあげましょう」
 両陣営が距離を取る。少しの静寂。
「懐かしきあの頃へ……イグニッション!」
 まずは早深が一歩前に出、黒スーツからカードを取り出し起動する。それを皮切りに、全員が起動する。
「起動! 鬼鋼蜘蛛の吼切、推して参る!」
 最後に、鬼面を付けた鋼誠の名乗りで、戦いの火ぶたが切って落とされた。


●本当に大切なもの
「貴女達だけは……絶対に私が!」
 緑を先頭に、志乃を囲う完全な布陣を敷いた渡会家側。それを崩すことは容易ではない。しかし、今の綾乃はそれを認識しても考えるに至らない。幾度も仲間を罵倒された、それは彼女にとって許せないことで、確実に冷静さを奪っていた。
『音無』『雲切』の二刀を構え、いの一番に飛び込もうとする。しかし、先刻から綾乃の挙動に注意していた嘉凪・綾乃(瑞祥破邪の椿・b65487)が眼前に立ちふさがり、押しとどめる。
「いい加減にしなさい! 何の為に私達が居るのか、まだ分からないの!?」
 呆れとも、怒りともとれる言葉、その強い語調とまっすぐに見据える瞳に、瞬間、こみあげていたものが少し冷める。しかし、自分の矛盾した行動に綾乃が気付いた時、それはすでに敵の射程圏内であった。
「申し訳ありませんが、お嬢様、御覚悟を!」
緑のローブが気付けば背後まで迫っていた。綾乃の背中に発剄された拳打が叩き込まれようとした時――。
「ッ!? があっ……っぐ……」
「!? 鋼誠くん!」
 鋼誠がその背を盾に、三人の間に割って入った。拳士の頚が体中を駆け、僅かよろける。仕留めそこなったことを確認した拳士が。さらなる一撃を加えようとした時、九頭龍・蓮汰(中学生白虎拳士・b73547)がその脇腹を蹴り飛ばし、注意をひきつける。
「邪魔はさせない……!」
 一連の動作全てがスローモーションのように経過した時、鋼誠がその膝をつき、嘉凪と綾乃が駆け寄る。
「鋼誠!? 大丈夫?」
「すぐに治癒を……!」
 四人の後方から、早深が冷静に鋼誠への治癒を行う。たちまち土蜘蛛の加護が宿り、鋼誠の顔から苦痛の色が消える。
「よかった……鋼誠くん、ごめんね、ごめんね……」
 自分が招いた犠牲。自分への怒りと、焦燥と。いろんな感情が入り混じった目をしてうろたえる綾乃を鋼誠は至って冷静に諭す。
「激情に囚われるな! お前の想いは、俺たちが共に背負う! ……お前なら、俺たちならできるさ。背中、任せてもらえるか?」
「大丈夫、私達が道を開くから焦らないで。綾ちゃんは一人じゃないから。だから皆で戦おう?」
 二人の瞳が、まっすぐに貫く。静かに、しかししっかりと、綾乃が頷く。三人に近づけさせないように、先刻から緑を牽制していた牧人も背中越しに叫ぶ。
「お祖母さん達に見せましょうよ!  先輩が信じてる、『絆』の形を!」
 ――ああ、どこまでも、どこまでも。なんて自分は愚かなんだろう。こんなにも頼れる仲間が、私には居たのに。
「……うん。皆、行こう。今度こそ、今度こそ私はあの人たちを超える。皆と一緒に!」
 目頭が熱くなる、それでも、泣くのは今じゃない。
刀を構えなおす。涙の粒は、頬を伝う前にそっと拭われていた。
「あらあら、当てが外れてしまいましたわね、お母様」
 牧人の放つヨーヨーを俊敏な動きで左右に避けつつ、一部始終を見ていた緑が一人呟く。綾乃の怒りのツボを抑えて単独行動をさせるつもりが失敗してしまった。自分は手にすることができなかった『現在』を持つ自分の娘に視線は否応にも移る。
 ――少し、妬けるじゃない。
 とはいえ、今はただの敵。そう自分に言い聞かせ、眼前の牧人に意識を集中させた。


●立ちふさがる壁
「行きます、お母様!」
 仕切りなおした三人、嘉凪は中衛としてその場にとどまり、鋼誠と綾乃は各々の武器を構え、牧人と交戦中の緑へと向かう。いち早く向かう鋼誠が、緑の生気を吸収する。よろけるその隙を逃さず、牧人が三日月のごとく緑の顎を蹴りあげる。
「ぐぅっ……数が集まれば勝てると思ったら大間違いよ?」
牧人に向けられていた目線が綾乃たちに向くと、一足飛びで後退し、緑は距離を取った。その意図に綾乃が気付いた時には、周囲には茨が現れ、三人を絡め捕らんと伸びてきていた。緑の後方、志乃の両隣りにいる二人が仕掛けてきたものだった。
「くそ、茨の領域か……!」
その締め付けが少しずつ三人の体に食い込む、動きを奪う。そしてその隙を、緑が逃すはずはない。
「さて、まずはさっきからずっと遊んでくれたそっちのボウヤから、沈めてあげようかしら?」
忍者刀を腰に収め、獣のごとき闘気を拳に宿した緑が牧人に向って迫る。何をするにも、遠すぎた。
「渡会流拳舞……破軍!」
その一撃が、動けない牧人の腹に深々と突き刺さる。牧人は短く唸ると、そのまま茨に体を預けるようにうなだれた。
「牧人くん!?」
「くっ……皆、今助けるから!」
「ラピ、お願いっ」
 はやる気持ちを抑えつつ、嘉凪がその場で舞を舞う。不浄を癒すその力が三人を縛る茨に纏い、茨は三人を解放する。同時に地面にくず折れる牧人を、早深の使役する真・グレートモーラットのラピが元気づけるように舐める。
「きゅぅ~……」
「ん……あ、ラピ。もう大丈夫だよ、綾乃先輩も、ありがとうございます」
 言いながら何とか起き上がる牧人。そうして一つの危機を脱した一同は再び敵を見据える。そこに体勢を整えるため、一度後退した蓮汰を加え、一度崩れた陣形を立て直した。
「ここから……反撃開始よ」

●獣断つ剣
「行くぞ!」
 鋼誠が霧を纏い、分身術を用いる。呼応するように綾乃も頭上で刀を回し、構えを取る。
最前衛には蓮汰が付き、龍のごとき蹴りで緑を攻め立てる。
「小癪ね……」
 瞬間、緑の持つ雰囲気が変わった。自然とその呼吸を一つにすることで、己の身体能力を上げる。本領発揮とばかりに闘気を放つ。
 しかし、それを待っていたかのように、嘉凪が呪詛を紡いでいく。
「我に仇為すものを呪いたまえ……!」
「……っ!? これは!?」
 呪詛は緑の体の自由を蝕む。棒立ちになった一瞬。さらに綾乃が操る茨が、その周囲を取り囲み完全に捕える。
「くっ、この力……!?」
ろくに動かない体、必死に首をひねり緑は周囲を確認する。見れば、後方の二人も、横に立つ部下も、茨に同時に責め立てられ、こちらの援護をすることができない。志乃の状態は、把握できない。リベレイションによって得た新技、茨の世界が、完全に相手の虚を突き、捕捉していた。運良く難を逃れた後方の支援役らが、緑を茨から開放すべく浄化の風を戦場に放つ、しかし、風は緑の傷を僅か癒すのみにとどまり、茨は依然締めつけ続ける。
「これで終わりです。お母様!」
 身動きのとれない緑に、鋼誠と綾乃が、それぞれ技を仕掛ける。
「行くぞ、渡会! 霧影爆水掌!」
「黒影剣……やああっ!」
 分身した鋼誠のエネルギーを纏った二つの掌底が緑の鳩尾と背を正確に射抜く。振動が体を駆け巡り、ぐっ、と唸るのもつかの間、黒い闘気を乗せた綾乃の二刀が正確に胸に十字を描き、切り捨てる。
「ふふ……強くなったわね……今度は完全に、私の負け、だわ……」
 茨から解放された体が重力に従って地面に倒れるその間際、緑がつぶやいたその一言は、戦場を駆ける騒乱に飲み込まれ、誰に聞こえるともなく虚空へと霧散していった。


●宴もたけなわ
緑を倒した一行、リーダーであり、ペアを失った拳士は、一人で今の綾乃達を崩すことは到底かなわない。蓮汰の大地を揺るがす震脚に怯んだところを牧人が蹴りあげ、あっさりと倒れてしまった。
残すは、三人。誰から先に攻めようか、勢いにのり、前衛組が接近しようとしたその時、一同の足が止まった。否、見えない何かに邪魔をされて、動けなかった。
一行の視線の先、先刻まで黙して座し、戦いを見守っていた志乃が、立ち上がり、杖を構えていた。老獪、そう言わざるを得ない手際。志乃が発した迷宮陣が、一行の行く手を阻む。
「やれやれ……平穏が続くと、こうも平和ボケしていかんね。鴉も地に墜ちたもんじゃの」
 倒れた二人を一瞥して、ため息をつきながら言う。その頃、一人後方で志乃の迷宮陣を回避していた早深が、赦しの舞を舞っていた。
「全ての禍事、罪、穢を赦し給え清め給え……」
 たちまち、一行を阻んでいた見えざる壁はその姿をなくす。しかし、時はすでに遅く。
「もう祭は終わりじゃ。我らが『渡会』たる所以の力……うけるがいい」
 不意に、空が暗くなる。太陽の光を遮るそれは、巨大な影。幾多もの巨大な木が、空を覆っていた。ヤドリギの祝福を受けた三人による、森王の槍。志乃の号令一つで、それらは巨大な剣山を作るように降りかかる。沸き立つ粉塵。それが収まるおよそ十と数秒の中を静寂が走る。しかし戦乱はまだ終わらない。手傷を負いながらも槍をかわした嘉凪のこの世のものとは思えない叫びが修練場中に響き渡り、志乃らを蝕む。
「ぬうっ、まだこんな力があるとは……」
 それだけでは終わらない。三人の力が一瞬抜けた隙を縫って、一直線に突っ込んできた蓮汰の龍尾脚と、分身した鋼誠の気迫こもる掌底が志乃の両隣りを駆け、緑のローブが二つ、宙を舞う。
「行ってください……前へ」
伸びてしまった二人の鴉を尻目に、蓮汰らは最後の決着を見守る。
「お祖母さん、御覚悟をっ」
「お祖母様……終局です!」
 疲労困憊、ボロボロになった緑の和服を翻しながらも突っ込む綾乃と、剣山から飛び上がり、重力落下の勢いをつけた牧人が戦いに終止符を付けるべく襲いかかる。
 長い闘い、その終末はほんの一瞬。三人の交差、数秒の静寂、そして、志乃が倒れて――終わった。
「私達の……勝ち……?」
少しの空白。まだ目の前の現実に自信の持てない綾乃が、隣にいた牧人に聞く。
「ええ! 勝ったんですよ、先輩!」
「みん、な……や……った……あ……」
 勝利を宣言するその言葉は、頬を流れる沢山の涙に遮られ最後まで紡がれることはなく、ただ力なくその場にへたり込んだ。
「お怪我は……大丈夫ですか、綾乃さん!?」
 早深が身を案じ駆け寄る。綾乃は泣いているとも、笑っているともよくわからないぐしゃぐしゃになった顔をしていた。しかしそれは、今まで己を縛っていた鎖のごときトラウマから解放された、真の笑顔だった。
「ちょっと腰がぬけちゃって……皆、本当に、本当に、ありがとう……」
「…………」
 そんな中、嘉凪は黙って倒れた志乃達に頭を下げる。その意図はいざ知らず、綾乃を何かに導くために勝負を受けたのであろうというのが分かっていた彼女の、静かな感謝だった。


●後片付け
 その後、早深らによって志乃らを含めた全員の治癒がなされ、再び客間へと戻ってきた。結果を踏まえた、今後の綾乃の進退について話をするためだ。
「さて、綾乃よ。お前はこれからどうしたい?勝負に勝った以上、今すぐ家に帰れとはもう言わんが」
 あとはお前次第じゃ、と志乃が言葉を止める。当の綾乃は、志乃と向かい合い、他の面々はその後ろ。やり取りを見守っている。
「私は……」
 それ以上の言葉が綾乃から出てこない。何とも取れない答え、そして沈黙。それを打ち破るように鋼誠が口を開く。
「任せてほしい。俺たちにもだが、何より本人に」
 瞬間、志乃の眉が僅か動く。一瞬口角がつりあがったように見えたが、次の瞬間には元の顔に戻っていた。
「青二才が……謳いよるわ」
「いつまでも雛のままだと思うな」
 周囲を警戒していた蓮汰が食い下がる。今はまだ雛でも、いつかは必ず飛翔する力を得るために研鑚するのだと信じているから。
「ふん……まあよい。もうしばらく好きにやってみせい。お前のなりのけじめ、しかと見たからのう。ただし……たまには、帰ってきなさい。ここはまぎれもなく、お前の家じゃ」
「お祖母様……」
 誰に言われたでもなく、ただ純粋な敬意とともに、綾乃は深々と頭を下げる。その様子に牧人は胸をなでおろし、早深は今となってはもう遠い家族との日々を思い出す。
「それじゃあ帰ろうか、みんなの所へ」
 全てを締めくくる最後の一言。嘉凪の言葉に一同は歓喜し、渡会の屋敷を後にした。


冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし

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