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PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。 わからない人にはわからないかも…。
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私からあまり多くを語ることはしません。
下記リンクより、本編どうぞ。


※あとがきは随時更新予定です。

なお、キャラ違いなどのご意見は多数あると思います、お手紙頂けたら、物語にさし障りない範囲で修正させていただくのでご容赦くださいorz
●三度、相対す
 時は夜、黄昏時。
 『廃』工場にも関わらず繋がっている電気を、周囲を照らす電灯を、誰も気にはしなかった。
 簡単に、それは驚くほど簡単に。
 能力者達は、リリスの前にいた。
 恭一が以前捕まった時のように、道中で弱らせてから襲う戦法をとる気では、という懸念もあったのだが、どこ吹く風。
手入れされていない道や瓦礫の上を通るのは苦労したものの、概ね問題も無く、今、対峙している。
「僕らの事は感知していたはずだ……余裕でも見せているのか?」
「あら、そういう訳でもないわよ? その様子だと、私の暗示は切れてしまったみたいね。残念だわ。貴方があの術式にかかったまま、私の贄を連れてきてくれたのかと期待したのに」
 恭一の問いかけにも余裕で応える。
「俺の過去を、記憶を、散々覗きやがって……貴様だけは、今度こそ許さない」
「中々素敵な体験をしてきたみたいじゃない? この三年間に。おかげで、こんなものも造れたわ」
 指を鳴らすと出てきたのは五つの影。そう、あれが予報士の言っていた、異質な存在だろう。
「貴方の記憶から造ってみたの、貴方の持っていた力をそのまま持っている。勿論、私の力でもっと強くしてあるけど。ふふ、素敵でしょう?」
「貴様という奴は……どこまでっ!」
「落ち着け、恭一。奴のペースに惑わされるな」
「……落ち着いて。冷静に対処すれば、勝機は訪れる……焦らず、いつも通りに」
 逸る気持ちを抑えきれない恭一を、冷静に伊知郎とフォアがたしなめる。
 相手の思うつぼになってはいけない。棄てたはずの仮面があれば少しは……そう考える思考は、自らのうちに抑え込んだ。
 そう、感情を仮面で抑える事はもうやめたのだ。自らの感情のままに、されど、怒りや悲しみに飲まれることなく、戦う。そう、決めた。
「それにしても、随分可愛いお嬢ちゃんたちもいるのねえ……ふふっ、美味しそう」
「なーにが美味しそうよっ!」
自分に向けられた視線に、稟はべっ、と舌を出した。
「(人を傷に付け入って、傷を抉って…絶対許さないっ!)」
 恭一から伝え聞いたこのリリスの所業を思えば、許すことなど絶対にできない。実物を見て、思いを新たにする。
 あらあら、と嘆息しつつ視線を変えると、艶やかな笑みを絶やさぬままに、次は綾乃へと話しけかける。
「そちらのお嬢ちゃんは? 私のお人形になる気はないかしら? 嫌なことなんて、全部忘れさせてあげるわよ?」
「残念。絶対ごめんこうむるわ。私には大切な人がいるし……何より、人の弱みに付け込んでって手口は不愉快よ」
 不快感を露わにした表情と共に、強く返す。
「随分と嫌われてるのねえ……この調子だと、残りの子達に聞いても一緒かしら」
「当然。貴女にはここで引導を渡します」
 ぴしゃりと綾が締める。表情はすでに戦闘時のそれだ。
「人の心は弱いものですわ」
 ぼそりと。独りごとのようにフォアが言う。
「そう、だからこそ、私が解放してあげようと言うのよ。心など必要ない。可愛いお人形にして」
「ですが、それにつけ込むなどと言語道断……速やかに成敗します!」
 カードを手に、そう言葉を締める。灰色の瞳の奥に、強い決意を宿して。
「あら、あくまでも、私を倒すつもりなのねぇ」
「そういうお前は、随分と恭一に執心しているのだな?」
 伊知郎が尋ねると、にぃ、と大きく口を歪める。
 笑っている――? そう、笑っているはずなのだ。それなのに、その顔はひどく歪み、そして、醜悪。まさしく、悪魔と呼ぶにふさわしいのではなかろうか。
「その子には借りがあるもの、私を傷つけたと言う借りが。殺すわ。極上の苦痛を与えた上で、必ず嬲り殺しにする! 貴方達も一緒にねぇ!」
「とはいえ、追い詰めているのはこちらですよ。せっかくのこの好機、逃す手はありませんよね」
 イクスがさらっと言葉を放つ。内に秘めた感情を綺麗に隠した笑顔で。
 そう、攻め入っているのは能力者の側。皆、気合充分にカードを取り出す。
「なんにせよその企み……打ち砕く!」
 蓮汰が一声入れてイグニッション。他の面々も、それに倣う。
「さあ、いらっしゃい。その溢れる生をすべて啜り取って、忠実な人形にしてアゲル……!」
 リリスもまた、己の周りにリビングデッドを展開、影もずい、と前へ出てくる。
「いくぞ! 今日こそ、俺達の戦いに……俺の三年間に、ケリをつける!」
 恭一が裂帛の気合と共に電光剣を構えた。
 斯くして能力者達の戦い、そして、彼にとっての私闘が幕を開けた。

●歩み、行く先
 まず、能力者達の行く手を阻むのはリビングデッドだ。その数は多い。だが、それでもやらねばならない。
「みぃんな、私の『造った』お人形よ。ふふ、素敵でしょう?」
 よく見れば、リビングデッドはすべて、若い男女で構成されていた。元は恋人関係にあった者達もいるかもしれない。そう考えると、やりきれない気持ちがこみ上げる。
「俺達だけじゃなく、こんなにも沢山の人を……!」
 刃を握る手に力がこもる。それを見逃さなかったラックが、半歩恭一の前に出る。
「気持ちは分かるが、焦るなよ。復讐を終わらせた先…見えてるもんがあるんなら、そいつを見失うな」
 受けた恩を返す。
 ほんの四ヶ月ほど前、自分は助けてもらった。暗い、昏い、暗闇の底から。
 だからこそ、前以上に、今は手を貸したいと願う。それこそ、『恩返しがしたくてしょうがない』から。
 加えて言えば、彼は同じ苦痛を知っている。『仲間を傷付ける』という最大の苦痛を。
 これ以上、同じ目に誰一人あわせまいと、その覚悟で彼はここにいた。
 ラックの制止を受けて、再三冷静さを欠きつつあった恭一も、ようやく落ち着きを取り戻す。
「……大丈夫です、もう、大丈夫。これも奴の戦略だ。引っ掛かってはいけない」
 その意気だ。そう言わんばかりに、顔を見合わせたラックは大きく頷いた。
「ふふふ、さあ、楽しい宴を始めましょう……?」
 周囲に広がる甘ったるい香り、パフュームだ。
 しかしながら、それぞれに想う人、思う信念がある彼らに、その力は通じない。
「お主ごときに惑わされてる暇など、一瞬たりとて有りはせん!」
 一喝、そして咆哮。ふん、とリリスが鼻を鳴らす。
「それぐらいでないと面白くもないわ。さあ、お行きなさい! 人形達!」
 一組の男女のリビングデッドが飛びかかる。狙いは、前線に布陣するイクス。
 その手が首にかかる、すんでの所で剣を間に入れ、攻撃を回避する。
 その脇を通り抜けて、蓮汰の龍撃砲がイクスに襲いかかった男のリビングデッドを吹き飛ばす。
 綾乃はその様子をひとしきり見届けながら、リリスの退路を塞ぎつつも援護ができるよう、部屋のやや中央に移動する。
 伊知郎もまた、戦場を見渡しながら、移動を開始する。狙いは――リリスの逃亡阻止。
 先刻イクスを襲った女の方のリビングデッドを、今度は恭一の電光剣に巻き付いた螺旋状のプログラムが襲う。
 それは、あらゆる力を一と零に分解する力。
 螺旋が体中に動きまわり、苦しそうに蠢く隙を縫って、鋼誠が鬼面による頭突きを見舞う。
 断末魔の叫びをあげて、女だったモノは動かなくなった。
 その女を踏みつけながら、目の前に広がるリビングデッドが一斉に群がる。
 綾は、それを真直ぐと見据えてから、両手を高らかに上げ、呼ぶ。
「来たれ、我が敬愛せし恵みの子よ。その力を以て、我が忌む我らの敵を……」
 言葉を止め、振りあげた両手が、蠢く死人へと振り下ろされる。
「……捕捉せよ!」
 描かれた陣から、茨が召喚される。二体のリビングデッドが茨に巻きつかれ、その身動きを封じられる。
 そのうちの一体に、稟が魔法陣を描き、魔弾を撃ち込む。
 男のリビングデッドは全身に雷をほとばしらせて、消し炭となって消え去った。
「これが僕らの力だ……!」
 光刃を煌めかせて恭一が、叫ぶ。眼前の彼女は、余裕の笑みを崩してはいなかった。
「あらあら、お人形を二つ壊しちゃった程度で随分と強気ねえ。とはいっても、あまり調子に乗られるのも癪だわ。ということだから……」
 指を一つ鳴らす。リリスの周囲に配していた影達が動き始める。
「貴方の力に頼ることにするわ。ふふ、さあ、最高の舞台を、私に見せて頂戴……!」
 もう一度指を鳴らすと、後方にいた影達から一斉に黒い魔弾が飛んでくる。
 狙いのない威嚇射撃。それゆえに、下手に避ける事も出来ない。
 武器を前面に出しガードを固める能力者達の前に、影が襲いかかる。
 後方から鳴り響く喧騒――もとい、演奏。その音に、動けなくなっている蓮汰が最初の標的。
「蓮汰君っ!?」
 悲鳴のような綾乃の声がこだまする。綾乃の援護も、ラックの援護も間にあわない。怒れし影の、荒れ狂うように振り下ろされる瞬きのような剣撃が蓮汰の胸を切り裂いた。
「大丈夫……まだ、戦える……っ!」
 身体の自由は聞かないが、傷はそこまで深くは無い。
「支援は任せて!」
すぐさま、綾乃の舞による援護を受けると、自身の力の解放で失われた体力を回復する。
 戦場を盤面全体へ広げ、叩いていこうと展開する能力者達。だが、影達はそれらを各個撃破しようとする動きを見せている。
若干の誤差を感じつつも、戦局は次の場面へと進行しようとしていた。

●記憶巡りてあの日あの時
 数分の攻防の中でも、状況にさほど変化は無かった。とはいえ、リビングデッドの数はあとリリスを直接護衛する二体となっていた。
 しかしながら、敵の要であるはずの影達の数は減らすことができずにいる。
 前衛を担う影達の力は強大なものの、綾乃・フォアによる、強化を逆手に取った攻撃が確実に影達を削っていた。しかしながら、敵もさる者、後方より響く解放の楽の音や、浄化の風が都度戦場を伝い、癒しを与える。
 ただ、彼女にとってリビングデッドは捨て駒程度しかないと言う事なのか、リビングデッドにはその恩恵は薄く、能力者らの迎撃によって確実に削られ、それによって、二体が葬られている。
 消耗戦になれば数の上では互角となった今、能力者達に有利は傾き始めていた。
 とはいえど、盤面全体が優勢に働くのかと言えばそういう訳でもない。
 そして今、残る二体のリビングデッドがリリスの護衛を離れ、鋼誠に絡みつき、身動きを封じていた。
「くそっ、離せ死人共!」
「鋼誠! 今――っ!」
 綾乃が鋼誠の縛りを解くべく、不浄の癒しを願い舞う。しかし、それを意にも介さず、リビングデッド達はなおも鋼誠を締めつける。
「ふふ、今、この子を落とせば、折角の戦況も逆転するかしらね?」
 リリスがずい、と、前へ出てくる。背中からはすでに、無数の蛇が展開されている。
「さあ……その生気、私に頂戴?」
 蛇が身動きの取れない鋼誠へと伸びる。間にあわないと誰もが思った……その時。
「鋼誠……」
「綾乃ッ!?」
 蛇の直撃を受けたのは鋼誠ではなく、綾乃の背であった。蛇の牙を伝って、彼女の生気が吸われていく。
「こ……のっ!」
 ラックの水刃手裏剣に蛇が割かれる。膝から崩れる綾乃を尻目に、リリスは後退していった。
「……妖シ輩ヨ、奔レ!」
その隙をさらに突こうと和刀の電光剣を振りあげる影には、フォアの放ったアヤカシが飛びかかる。同時に、周辺にいた者達を癒す。
「牽制は俺達が、早く綾乃を」
「あんまり邪魔されちゃ困るからねっ!痺れちゃえっ!」
 恭一が影を押しとどめ、稟が弾幕を張る。その間に、綾乃の祖霊が綾へと宿す。
 同時に、ラックの符によってリビングデッドを引き剥がした鋼誠は、すぐさまそのうちの一体を灼熱のうちに葬る。
「邪魔立てするな……灰にしてくれるわ!」
 その表情は、まさしく鬼と呼ぶにふさわしいだろう。
「大丈夫か、綾乃!」
 駆け寄る鋼誠を、綾は弱々しい笑顔で迎えた。
「なんだか、昔を思い出すね。あの時は、鋼誠が私を守ってくれたもんね」
 あの時、とは、彼女が過去と離別するきっかけとなった闘い。綾乃や鋼誠、蓮汰は、その時共に戦った仲間だ。
 そして鋼誠は、今では生涯を誓うパートナーでもある。
「でも、私はちょっとダメかも。あと、お願い……ね?」
 祖霊を降ろしたものの、彼女の体力は限界を超えてしまっていた。
 掴んだその手からから力が抜けるのを感じる。悔しさと、不甲斐なさと。その全てをかき集めて、鬼は再び立ち上がる。
「友の心の傷に付け入り、あまつさえ綾乃にこんな真似しおって……覚悟せい、楽に逝けると思うなよ!」
 開口一番、彼が向かったのはマジカルロッドを振るう、奏でし影。
「塵も残さず……消え去れぃ!」
 紅蓮の腕に抱かれて、音は消えゆ。こちらの被害もあれど、最大の回復手を倒すことに成功した。
「くっ、ここまでの力があるなんて……!?」
 その炎を見つめ、リリスが舌を鳴らす。
 胸の奥に去来するは三年前か。あの時も、彼女は恭一の琴線に触れて、傷を負った。
 あの時と同じ恐怖が、こみ上げる。背後を振り返る。そこはすでに、能力者達の領域(テリトリー)。
「逃しはせん。己の仕出かした事に対しての責任を果たしてもらおうか」
「逃げる算段か? 形勢逆転だな……何処へ行こうというのだろう。逃げ場などないというのに」
 伊知郎とイクスが立ちふさがる。二人の黒影剣がリリスの体力を奪う。
「くぅう、影よ、私を守りなさい!」
 高々とリリスが指を鳴らす、しかし、その下に集まったのは怒れし影のみであった。
「あんたの頼る影達は、みーんな動けなくしちゃったから!」
 そう言って、伏せる絶望せし影の前に立つのは綾乃とフォア。彼女らの言葉の力が、影を蝕み、時間を追うごとに影達は次第に、気付かぬうちに、臥していった。絶望せし影のその浄化の力もその毒を癒すには至らず、そしてすでにその力を使い果たし、成すすべもなく倒れていった。
「馬鹿な……こんな、こんなことって!」
 振り返る。その先にいたのは、恭一と、稟。
「また、逃げるのか?」
 つとめて冷静に、問う。
「……! ええ、逃げるわよ。今回は貴方のお仲間にやられてしまったけれど、次は、次こそは!」
「逃がしはせん、と」
「言ったはずだけどな?」
 隣にいたはずの怒れし影が斬り伏せられる。刃を閃かせるのは再び伊知郎とイクス。
「そんなっ……!」
 唯一自分の盾となりうるものを失って、退くも行くも窮まった。
「さあ、やっちまいな。ケリは、自分の手でつけるもんだろ」
「感謝します、先輩」
 彼女の眼前で、そんなやり取りをしながら。
恭一と稟が迫る。
「言ってやりたい事はいっぱいあるけど、さ」
 稟が魔法陣を描き出す。
「あんただけは絶対許さないよ。絶対逃がしてあげない」
 その表情に浮かぶのは――確固たる決意。そして、雷が放たれる。
「ああっ、ああああああ!」
 クリーンヒットしたのを見て、恭一が大きく跳躍する。空中で一回転して体勢を変えると、両の電光剣に、光と闇に。それぞれ詠唱プログラムを宿らせて、そのまま垂直落下する。
「ぶつけてきてね、今までの想い」
 その背中に、小さく稟が呟いた。
 決着の瞬間、それを彼がどんなに待ちわびていただろうかと思いを馳せながら。
「消え去れ悪夢……因果地平の彼方まで!」
 一閃。リリスの胸をバツ印に斬りつける。
 短い悲鳴を上げて、リリスは消滅していった。
「カーテン・フォールだ……アンコールステージも、これで、終幕だ……」
 消滅していくリリスを見ながら、一人呟く。その心情は、誰にも推し量れるものではない。
 呪詛によって動けなくなっていた影も、術者が消えた影響か、いつの間にか消えて、黒い灰となっていた。
「そういえばさ」
 灰を見ながら、稟が呟く。
「一人だけ脆かったあの影……どうして、他の力、使わなかったのかな」
「使えなかったんじゃなくて、使えなかったんだろ」
 肩を叩いて、ラック。
「多分あいつは、恭一が使役を――その、マヤっつー子を連れてた時の影だったんだ。んできっと、あのリリスでも、二人の絆までは、復元できなかったんだろうよ」
 その解答に、やや頬を膨らませながらも、得心と言った顔をする稟に、フォアがそっとたしなめる。
「人の絆は、彼女が思っているよりも深く、強いもの。それは死者とのモノもさることながら。けれど、彼が貴方を思う気持ちも、きっとそれに劣らぬものですよ。でしょう?」
 うん! と、いつもの笑顔で応える稟。
 そして、いつもの礼儀として、残骸広がる廃工場に一礼をする蓮汰を最後に、一行はその場を後にした。

●ただいま、おかえり、さようなら
 時刻はすでに朝に近く、周囲もうっすらと明かりが差し始めている。
 一行は廃工場を後にしたのち、その近くにある小高い丘へと足を運んだ。恭一たっての願いで、とある人物の墓参りをするためである。皆もまた、それに快諾した。
 恭一によると、そこに彼女……正確には、彼女の詠唱銀を埋めた墓があると言う。
 世界に忘れられ、ひっそりと佇む石。その下に、器を失った魂は、眠っているのだ。
 少し長い山道を登り、広がったその光景は、辺り一面に朝顔が群生しており、今まさにその彩りを広げんとしていた。
「ここ、とてもいい場所だね。花も草も、輝いてるよ」
 見渡す景色に、思わず綾がはしゃぐ。傷に障るからと鋼誠になだめられたが、とても楽しそうに周りを見渡す。吹く風は滑らかに、一向の肩を撫でる。
「ここは、生前彼女が好きだと言っていた場所でね。縁日には、ここから花火が綺麗に見えるんだ」
 今度見てみたいね、と話す女性陣を尻目に、恭一は少し奥へと進む。そして、不意にしゃがみこんだ。
 そこにあったのは少し大きめの石。やや風化されているものの、くっきりと字が彫られていた。

『伊藤 真彩、魂の残滓と共にここに眠る』

「真彩……ようやく、君の墓前で、良い報告ができるよ。お前の仇は……取ったから。皆と」
 粗末な墓の前で言って、恭一は皆を振り返る。
「皆、僕の大切な仲間なんだ……あの時みたいに、僕はもう、独りじゃない」
 そうしてもう一度墓へ視線を戻し、隣でやや所帯なさげにしていた稟の肩を抱き寄せる。
「まだ、そっちへは行けないけれど……どうか、見守っていてほしい。僕と――彼女を。だから、今は、安らかに……」
 やや頬を染めながらも、笑顔をこぼす稟と見合って。そうして二人、手を合わせる。他の面々も、同じく手を合わせ、顔も知らぬ隣人へと思いを馳せた。
「恭一も言ってたけど、稟ちゃんも皆もいるし、大丈夫だよね。だから……」
 見守ってあげてください、その最後の言葉は、綾乃の胸の内だけにしまわれる。
 その願いはきっと言葉にせずとも、伝わるはずだから。
「彼は……もう、大丈夫ですわ」
 その声を聞いてか聞かずにか、その隣でフォアもまた手を合わせ、報告を。
 今はもう、こんなにも多くの仲間に囲まれている。どんな時も独りじゃないから彼は戦える。だから心配しないで、と、安らかな眠りを願う
 一足先に頭を上げ、その様子を一番後ろから綾と共に見ていた鋼誠の脳裏には、浮かぶ景色があった。
 それは――己の離別の日。
「思い出しちゃう? 鋼誠」
「ん……まぁ、な」
 心中を見透かされた綾の問いかけに若干戸惑いつつも、答える。
「……俺ん時も、こうして仲間が支えてくれたっけな」
 恭一の背中に、己を重ねる。呟きは、自然と口からこぼれ出た。
「大丈夫、鋼誠には私がいるよ。これからも、ずっと、ずぅっと」
 そう言って手に触れる小さな温もりを、鋼誠はそっと握り返した。
 数分の後、恭一が立ったのを見て、一行は帰路へと着くべく墓から背を向けた。
「お疲れ様。復讐に持て余した力と時間は、これからは傍に居る者の為に使ってやってくれ」
「……振り返るなとは言わねぇ。けど、どっかの馬鹿みたいに、過去だけ見て生きる様な真似はするなよ。見据えるべきは現在と未来だ。きっと、それを望んでるだろうからな」
 遠く広がる街の風景を見やりながら、伊知郎とラックが言う。
「はい……。彼女を守るのは、僕の役目ですから」
 その為にも、強くなろう、強く在ろう。そう決心した右手は、拳を作って強く握られていた。
 恭一達の話を聞いた蓮汰もまた、己の強さについて考えていた。
「最近、気がつきました。『最強』でなくともいいと。でも、『無敵』ではいたい」
理不尽な運命に抗うために、たとえ神相手にでも打ち勝てるくらいに。
それは、大切なものを守るために戦わんとする者達と同じ気持ち。
自分の『何か』を守り、そして貫くための、大切な心。
「そうだな、それは似ているようで、非なる事だ。私達には、必要なものだろう」
「ですね。もう、僕も、闇雲に力を求めるつもりはない…。僕だけの強さを、見極めてみせる」
 聞いた二人もまた、その言葉に頷く。
「明けない夜はありません。過去があるから、今この時がある……そうでしょう? 全てを包み込んで歩んでいけば良いのだと思います」
 その横でほら、と。そうイクスが指差した先にあったのは、今まさに昇らんとする朝日。
 綺麗、と感嘆する女性陣。その中に混じる、陽に当たって輝く金色に目を細め、最後にもう一度だけ墓を振り返ってから、恭一は誰にも聞こえない声で呟いた。





 Quod Erat Demonstrandum.
(これにて、目的は果たされた)





 ありがとう、そして、さようなら。





 はじめてだった、ぼくのたいせつなひと。





冒険結果:成功!
重傷者:渡会・綾乃
死亡者:なし


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