PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。
わからない人にはわからないかも…。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
もうそろそろ書いてみようと思いました、恭一の小説。
今回は恭一が能力に覚醒する時~使役のマヤにまつわるお話。
三部作になるので、飽きずに読んでいただければ幸いなところ。
今回は恭一が能力に覚醒する時~使役のマヤにまつわるお話。
三部作になるので、飽きずに読んでいただければ幸いなところ。
その時はまだ、神谷・恭一という存在はどこでもにいるただの中学生で、マヤはただの伊藤・真彩という幼馴染だった。
「やれやれ、現実は救い難いもんだよ」
「もう、恭一ったら、そんな小難しいこと言ってたらすぐにハゲちゃうよ? こんな美少女が腕を組んであげてるんだから、もっと素直に喜びなさい? あっ、コラ、歩くの早いぞー?」
春の息吹の名残が残る皐月の夕方、住宅街の小さな路地を、一組の制服姿の男女が歩いていた。
恭一、と呼ばれた方の眼鏡をかけた少年は、自分の右腕に自らの腕を絡める少女からは目をそらし、恥ずかしげに早足で歩く。少女は少し引っ張られ気味に半歩後ろを歩く。
「う、うるさい。真彩はもう少し人目とかを気にしろ。恥ずかしいだろ?」
「全然、それに、人いないし」
即答。確かに、通りには二人を除いて誰もいなかった。あたりを見回して初めてそのことを確認する、幼馴染とはいえ、異性と認めてしまった彼女とこのような状態は非常に恥ずかしい、という恭一の思春期な気持ちが一人空回りしていた。
「ひょっとして恭一、ホントは嬉しいけど、素直に喜べないってヤツ?あは、かーわいー♪」
とはいえ、そんな純情も、全てお見通しではまるで形なしで。
「~~~!? う、うるさいっ」
「あん、もう、恭一、待ちなさいよー」
強引に腕をほどいて、先ほどよりも早足に歩く。もちろん、一応後ろは気にする。と、数メートル歩いたところで、真彩の足が止まった。
「? どうしたんだよ?」
先ほどとは様子が違っていた。雰囲気、気配、適当な言葉が見つからない。そして、やや俯きながら、真彩が口を開く。
「あ、あのさ、恭一、明日は、私の……」
何事か口が開く、が、恭一にはその言葉は聞き取れなかった。
「? 何?」
「……なんでもない。ほら、帰るよっ」
そう言うと、今度は恭一の前を早足に歩く。その心の機微は、恭一にはわからなかった。
「やれやれ、これだから、現実は救い難いんだ」
そうして、一日が更け、また朝日が昇る。どうせまた、明日になれば機嫌も治っているだろうと、軽く嘆息しながら後を追う。そんな当たり前のような日常を、明日も想像した、しかし。
恭一は何も知らなかった。世界の姿も、本当に救いがたいものは何かも。
PR
Comment
Trackback
トラックバックURL: