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PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。 わからない人にはわからないかも…。
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 偽シナ相談中の皆さまへ、何かしらのTIPSとならんことを祈りながらアップさせていただきます。
 この話にて、彼が銀誓館に来るきっかけとなった事件はおしまいです。
 ではでは、稚拙な文章ではありますが、どうかご照覧あれ……。









 生ある物には死があって。

 始まりがあるものには終わりがあって。

 与えられたものは、いずれ奪われて。

 ……そうして、彼女の生を僕は奪った。




 それから2週間ほども経ったか、とある休日の夜。
 公園には、変わらず少年の姿がそこにあった。傍らに少女を連れて。
 そこだけ抜き取れば、きっと甘酸っぱい記憶を連想させるに違いない。しかし、その姿や異様。
 ベンチに腰掛けた恭一、そして、その横に座る真彩…突き出された彼の腕、突き立てる彼女の歯。
 連日の行為に、さすがに恭一の顔もやや青ざめていた。原因はもちろん、血液不足。もともと貧血がちであったことから、そこまで深く家族や周りにも心配されることが無かったのは幸か不幸か――兎にも角にも、ここまで、彼女の存在は周囲に知られることはなかった。しかし、無論、限界は近付いている。

「ねえ、恭一、覚えてる? 去年の花火大会」

「ああ…どうかしたかい?」

「私さ…あの景色、好きなんだあ…」

 そうか、と、言葉は切れて、沈黙が流れる。耐えきれず、恭一から口を開く。

「真彩……いつまで、こんなことを続ければいい?」

「……ごめんね、恭一。今は、こうするしかないの…」

「……そう、か」

 毎晩毎夜、かわされる問答、そして沈黙。無駄と分かっていても、聞かずにはいられなかった。そして、得られる回答に、無理やり納得するしかなかった。

「……でも」

 しかし、その日は――違った。

「ごめんね、恭一。もう私…我慢でキなイヨ…血ダケじャ…まんぞ、ク…あ、アア……」

 胸を抑えるようにうずくまる真彩。恭一がその肩に手を触れた時……『それ』は、現れた。

「あらぁ……もう限界なのねえ……このお人形さんも、案外もろかったわねえ……」

 長い金髪は月夜に煌めき、妖艶な雰囲気を持つ…そんな美女が、いきなり目の前に現れる――とりあえず、驚かない訳がないだろう。恭一も多聞に漏れることは無く、目の前でうずくまる真彩よりも、思わずそれに視線を移してしまった。

「あなた…誰、ですか? 真彩の…知り合い、なんですか?」

 飲み込めない現状の中、絞り出すように尋ねる。

「私? ええ、知り合いよ? だって…今のその子を作ったの、私だもの」

 さらっと言った一言。混乱に次ぐ混乱。何が何だか分からない。

「今その子が苦しんでいる原因を作ったのは私。私が彼女をそうしたの。でも、感謝して欲しいわ? わざわざ殺さずに、リビングデッドにして生かしてあげたんですもの」

「リビング…デッド……?」

 生ける屍……よくホラーものの映画だったり、小説だったりで聞く単語だけど…真彩が、今そうだというのか? そして、それを作ったのがこの人……? 恭一の中で、警鐘が鳴る。今、この質問をしてはいけない。けれど、真実を知りたい、どうすれば、どうすればどうすればどうすれば―――!

「あ。なた……が…」

「ん? なにかしら? あなたもこれから死に逝くのだもの、何にでも答えてアゲル。そうして絶望の中で、大事な人の手で死にゆく姿を見るときが、私の一番の快感なんだもの」

 クスクス。妖艶に笑う女の後半の言葉には貸す耳も無く――ただ、一言だけ、頭の中で禁じられた質問は、パンドラの箱は、開かれる。

「あなたが、真彩を、殺したんですか?」

 震える声で、精一杯の勇気を絞り出して……言葉は、にべもなく返ってくる。

「ええ、そうよ? そして、あなたもこれから死ぬの」

 その瞬間、彼の中で何かが弾けた。頭の中で、声が聞こえる。『こいつを決して許すな』と、『その想いを力にして表せ』と。
 そうしてかざした手に、『それ』は握られていた。紅い、タクトのような――棒。体の中に眠る血が言う、『それを突き出せ、詠唱せよ』と。
 声に従って、眩い光の中、紅き杖を向ける。一筋、発せられた炎は女を焼いた。

「なんですって!? まさかこの子……余計なことをせずに、さっさと殺すべきだったかしらね……」

「後悔の暇なんて与えない……真彩を殺した罪、その身を持って償え!」

 そうして発した二度目の炎を、次は避け、距離を取る。

「少し驚いたけれど…覚醒したてじゃあ、まだまだ私の敵じゃないわ。ふふっ、能力者の血は格別に美味しいのよね……人形には勿体ないわ。私が直接すすってあげる…」

 とった距離を、言いながらじりじりと詰めてくる。一矢報いたが、これまでか…諦めが思考を覆わんとするとき、聞き慣れた声がした。

「恭一、右へ避けなさい!」

 驚く間もなく、体は反応していた。背後から巨大な何かを感じ――振り向いた瞬間、それは巨大な槍となって目の前に降り注がんとしていたからだ。

「母、さん…!?」

 数m程離れた公園の入り口、自分の母親がそこに立っていた。
 先ほどの声、槍を放ったのはいつも見る姿とは違う。剣呑な雰囲気をまとい、今にも射すような殺気を放つ。

「あら、あなたのお母さんなのね……こっちは、中々手ごわそうね……」

 上がる砂煙から、声。その声色は、さらなる未知への好奇心を感じさせる。

「母さん、僕…」

「話は後」

 何か言おうとする恭一を、目線そらさずたしなめる。そこに恭一の知る母親、神谷緋乃は無く、人知れず魔女として戦ってきた女性、渡会緋乃がそこにいた。

「我が敬愛する汝らに命ず――我が忌む我が敵を捉えよ!」

 高らかに詠唱し、両手を広げる――女の周りに魔法より生成された茨が生え、女を捉えんと襲いかかる。
 女はそれを紙一重でかわしつつ、それでも目だけは緋乃を補足する。まるで何かを待っているのか、あるいは、今この瞬間を楽しむのかとでもいうような表情で。

「ふふっ、良いわねえ……けど、いささか飽きたわあ。お母様を仕留めるのはまたの機会にするとして…今日はキミよ? さあ……!」

 茨による攻撃が切れた一瞬の隙、それを女は見逃さなかった。流麗な動きから目の前へ、そして胸元へとその凶刃が伸びる。

「な…う、うああああああああ!?」








 目を閉じた。



 暗闇の中、自分は死んでしまったのだろうかと考える。



 でも、どこも痛くない…痛くない?


 目を、開ける――。




「そんな……」

 恭一と、女の間に影一つ。

「ごめんね、恭一……巻き込んじゃってさ」

 真彩だった。その背中から、まるで翼でも生えたかのように尖った何かが伸びている、女の、爪だ。
 
「そんな…どうして…」

「ダメだよ…私には恭一は殺せない。だから、私が恭一を殺さないためにも…こうするしかないんだよ」

「く…! この駄作! 人形の癖に、邪魔しないで!」

「恭一は…ころ、させ、ないっ!」

 必死に爪を引きぬこうとするのを、文字通り全身を以て止める。数瞬、後ろから静寂を破る緋乃の声。

「撃ちなさい、恭一! 彼女の想い…無駄にしちゃダメ!」

「そんな…でも!」

「真綾ちゃんは今、人であって人ならざる存在なの。ここで助かったとしても、いずれあなたを殺そうとする…そんな事、彼女にさせないために…撃ちなさい!」

 有無を言わせない緋乃の弩号。状況は差し迫る。やるしか、なかった。

「まや…ゴメン…まや…うわああああああ!」

 杖を真彩の背中に突き立てる。黄色の魔法陣が広がり、編み出されし雷弾が、彼女ごと打ち貫く。

「―――――」

 目の前が光に包まれる瞬間、真彩の唇が微か動くのを見た、しかし、その音は届くことは無く――。

「きゃあああ!? く……おのれ…この屈辱、忘れないわよ…」

 衣服は乱れ、足元もおぼつかないながらも尚も女は立っていた。
 言うが早いか、女は再び、夜の闇に消えていく。緋乃が槍を収束して放つも、すでに姿は無かった。

 後に残されたのは、彼女の仮初の命の残滓…銀色の砂と、悲しみに暮れる、独りの少年だけ。

「真彩……」

「……帰りましょう、恭一。ちゃんとお墓、作ってあげないとね」

 いつの間にかそばに立っていた緋乃が、優しく恭一の肩を包む。
 そうしてようやく、彼は涙を流すことができた。

「母さん…く、ううう……うあああああ……」

 そこにいる緋乃はすでに、恭一の母親である元の表情に戻っていた。優しく頭を撫で、ゆっくりと、二人で帰路に着いていく。
 彼はあの日の記憶を決して忘れることはない。最期に彼女が残した言葉を、その顔を、決して。

 そして、銀色の砂は公園からほどなくした場所にある、小高い丘の上に埋められた。
 直前に彼女が言っていた、彼女が好きだといった風景――それを、見続けられるようにと。石を積み上げただけの、粗末な墓標を立てて。

「…さよなら…真彩、そして、ありがとう」

 全てが終わった時、陽は既に昇らんとしていた。それは何かの始まりを示すかのように。彼の新たな人生が、数奇な運命の流れの中に放り込まれたことを示すかのように。




 その後、母親から知らされた真実と共に、彼は急遽銀誓館への編入をするのだが、それはまた別の話―――。

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