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PBW(プレイ・バイ・ウェブ)『シルバーレイン』のキャラクターブログです。 わからない人にはわからないかも…。
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 かねてより書く予定だったSSをば。

 さて、満足いくものができているかどうかは……。






 ある晴れた日の午後。
 私と鋼誠くんは大きな樹の木陰にいた。
 それは、私の実家の森の中心部、森で一番大きな大樹。その樹齢は人の一生を何度も巡る程のもの、そう母に昔聞かされた覚えがある。
 大きな影を作るその樹の下で、私達は学校での互いの近況を報告し合ったり、ありふれたことを話したり。私達が、なんとなく『恋人』と呼ばれる男女がするものだと漠然に思ってる、そんなことを踏襲していた。
「――でね? その時、恭ちゃんったらね……」
「――へぇ? アイツ、結構抜けてるトコもあんだな……と、ふあぁあ……」
 ふと、会話の折、鋼誠くんが大きな欠伸を一つ洩らした。大きく口をあけて崩れたその表情が酷く愛らしく感じて、思わず微笑ってしまう。
「――んだよ、笑うなよな」
 言って少しだけむくれる。そんな表情だって、なんだかほほえましい。そう思えるのも、彼が『恋人』だからなのだろうか。
「あは、ごめんごめん。鋼誠くん、疲れてるの? それなら少し、横になったら?」
「……ん、そうさせてもらうわ。悪ぃな……」
 少し瞼の落ちた眼をこすりながら、芝の広がる地面へその頭を預けようとする、その瞬間。
 すっ、と。私の膝を差し出す。
「――っ!? お前……」
「いいからいいから。それとも、私の膝枕……イヤ?」
 飛び起きようとする頭をそっと押えて、言う。頬を赤くした彼は、それを悟られまいとしているのか、顔をそむけてそれじゃあ……と、私に頭を預けてくれた。その頭を撫でる。なんだか、優しい気持ちになれた。
 こっそり練習していた癒しの呪文に節をつけ、自分なりにアレンジして、耳元でささやく。
 初めての膝枕。内心、彼が喜んでくれるのかどうか、不安にも思っていたけれど、心地よい風と、小鳥たちのさえずりが呪文を囁く私を応援してくれるかのように、肌に触れ、耳を通る。ふと、囁くのを辞めると、木々のざわめきの中に、彼の寝息が静かに沁み渡っていた。
「寝ちゃった、ね……」
 一度、その頬を撫でて、顔を近づけてみる。いつもより近い、顔と顔の距離。それだけで、心拍数が一気に跳ね上がる。
「……こーせーくーん、寝てるのなら、返事してくださーい」
 思わず口からも意味のわからない質問が飛び出す。それぐらい、緊張している自分がいる。膝の上の彼は、そんな私を知る由もなく、安らかな顔で眠っている。
「……起きないと、キス、しちゃうよ?」
 言って、さらに顔を近づけてみる。吐息が当たるほどに。視界が顔で覆われる。
 本当に、寝てるのなら。

 ……一度くらい、いいよね?

 そっと、唇を重ねる。
 彼の体温が、唇を通して伝わる。
 最初で最後の、ファーストキス、不意打ちなのは、許してね。
 こんな方法でしか、口づけをかわす自信がまだないから。
「えへへ……ごめんね……きゃっ」
 ぐるん、と、彼が寝返りを打つ。膝から伝わる感触に、思わず声が上がってしまう。
 心なしか、一緒に伝わってくる体温が、さっきよりも少しだけ温かくなった気がするのは、気のせいなのかな。
 少しだけ、陽は傾き始めて。赤くなった頬を撫でる風が涼しくなったころ、私達は家路についた。
 別れ際、鋼誠くんの顔がちょっと赤く見えたのは、夕陽のせいだったのかな。
 天上を見上げる。蒼は赤となり、太陽は月へと舞台を譲る。
「明日も、頑張るぞっ」
 少しだけ伸びをして、走る。あの時きっと彼は起きてたのだろうけど、それは瑣末なこと。
 そこに在る幸せを一緒に感じられることが、とてもうれしいから。

 私は、きっとどこまでも頑張れる。







朔望:……なんか、暴走しすぎた気がする私!?

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