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素人小説に抵抗がない方のみどうぞ。
内容的には綾乃の入学後~現在を軽くなぞったお話です。
昨日書かせていただいた結社さんに入るまでが主な内容になります。
思えば、あの頃の私は、正直言って毎日が退屈だった。
教室からでも見える、渡会家が保有する深い深い森、その中で過ごしてきた十五年間。そして、憧れが現実に変わったここ一カ月。
「なにも、変わらない……」
思い切って寮にも入ってみた、優しい寮長や、入ったばかりの私にも愛想よくしてくれる同じ年頃の子達。でも、私は彼らに踏み込めなかった。どう接していいかわからなくて、どことなく距離ばかり置いていた。
――これじゃあ、ここに来た意味なんてないじゃない。
ここ、銀誓館には結社というシステムがあると聞いていた。けど、人づきあいというものとはまるで皆無だった私、そう簡単に一歩を踏み出すこともできなかった。
「どこか、いい結社ないかな……」
ぼそ、と。一人ごとを吐いた、そんな折。
「渡会さんって、ひょっとして同じ名前?」
多分、それが私の分岐点だった。
一人だった私に陽だまりのような笑顔で話しかけてくれた彼女は、その緋色の瞳で、私をとらえてくれた。
「え……?あ、はい、そうみたいですね、珍しいなぁ」
それがあまりにも突然すぎて、驚きを隠しきれなかった。
でも、その笑顔が私に向けられた時から、私の学園生活は、始まった。
気づけば彼女と話していたクラスメイトの男子とも話すようになって、そのうちに、彼女の運営する結社にまで足を運ぶようになっていた。
そこでは、彼女と、そしてたくさんの人々の笑顔が溢れていて、その笑顔に入りたいと、私はようやくその一歩を踏み出した。
「そうか、きっと、これが……」
きっとこれが、私が望んだもの。
それからさらに、あの森では一生涯体験できないようなことも、私は経験する。
――戦争、そして、出会いと別れ。
聖杯を巡る戦争後、気づけば私は、渡会の森に足を運んでいた。さらなる力を得るために。そして、新たな力へのカギは、今、この手のうちにある。
名刀『雲切』と『音無』、そして、14代も前、最強の渡会家当主が遺したという幻の書物。
「私は、強くなる」
森を出る。太陽の光が私をやさしく包み込む。
――この陽だまりと、初めて知った幸せを護るために。